半分はかえらない
実家に帰って少しずつ体調が戻ってきた。一日一食だったのも今では三食に戻りつつあるし体重も増えてきた気がする。貧血と冷えは相変わらずだけど気分は悪くない。胃痛はそこそこ、頭はちょと重い。偏食と少食の祟りが今きた。ホントだめなやつ。
この前八年ぶりに会った友達に聞かれた将来の夢。言えなかったけど、今とは違う苦しみ方で生きたい。
少し体調のよくなった体でベッドに沈んだ。ここからはけして見えない、雲の断面、空の側面。
私の七年、私の七日。
今までの量の割に妙に濃い経験を見て思ったけれど、救いって別の行為の副産物のような気がします。
だから、おまえを助けたいなんてゆって寄ってくる人は信じられないしあまり好きになれない。助けた後助けられたいからこそ求めるし、君を救うと言って自分が救われたい。いつの間にかそういうものに冷たくなってしまった。投射しないで、と言いたくなる。
今の苦痛から助かる方法なんて私自身だってわかんないよ。それを助けるとか救うとかいかにも天から降りる蜘蛛の糸のような甘美な響きの言葉を使って揺さぶりにくるのは卑怯だと思うの。
どこかで助けを求めているのに、真正面からくる助けはすべて拒絶したくなる。ただ、私がゆがんでるだけなのかもしれない。
本当に、ただただ助けたいんだっていう人がいたとしても、もう私には区別がつかない。
救いって何なの、どんな時に救われるの?純粋に助けたいと思うのはだめなの?エゴになるの?
ふと、元彼のH君のTのKちゃんのともちゃんの誰かの声で自問する。
洗面所の鏡は引っ越してきた当初のまま、まるで人を写すのは初めてという風に無愛想な面もちで私を照り返す。
夕御飯を吐いて涙目になった私は、少しきれいだった。
「人間関係に潔癖すぎるよ、harufarは。」
誰かの声がよぎった。
☆
無題
「ピアノまた聴いてくれる?」
無題
「聴くよ、聴きたい」
Re:
「じゃぁピアノ諦めなければまた君に会えるってこと!?」
Re:
「俺マジきたないね」
そうして私は、自分の書いているものが半分は彼によって書かれているのだと改めて気づき、小さな声をあげて泣きそうになった。
落とすかげ
降り立った空港はいつの日もどこか優しかった。
懐かしいとか久しぶりだとかそれっぽい雰囲気でとりあえず故郷に帰ってきたという気持ちにさせてくれる。それだけで十分すぎるくらい優しい。
南国九州の日差しに瞼をしぱしぱさせながら、はらはら降る雨を見やる。天気雨。送った荷物は大丈夫かなと考えながら鞄を持ち直すと、出てすぐの所にお父さんが迎えに来ていた。ジャージはやめてって言ったのに。
帰ってきたこの地で帰省の度に再会が行われる相手、元彼に今日また会うことになった。今度こそ、終わろうと。会いたくなかった、けど、このままじゃ何も終わらないのもわかっていた。
いつもの交差点で待ち合わせして、彼の運転する車で海までドライブをした。
始まりの場所は知っていたけれどそういえば終わりを見たことのない自衛隊の基地をぐるりと囲んだ高い金網と、夏の間は素知らぬ顔をする桜並木に沿って車は進み、いつの間にかセルフになったガソリンスタンドを通り過ぎた。バババババと聞き慣れた音がする。
私の住む町では−正確には町と言えるほど大きくないのだけれど−自衛隊の基地がある関係上、学校の上を車の上を家の上を蹴り上げられたボールの上をありとあらゆる上をひっきりなしにヘリが飛ぶ。大抵は小さい頃からその騒音には慣れているので今日も飛んでいるのか昨日も飛んでいたのか気づかないのがほとんどだが、先生とかテレビとかこちらが聞こうとする声をかき消すような、いやでも注意を引く低空飛行のヘリがたまにある。
もしかしたら、聞こうとする音が少ないだけで本当はもっと頻繁に低空飛行をしているのかもしれない。田舎の地上は静かだ。
ただ、すぐ頭上の空をただならぬ音量で覆っていくそれを見た時は、たいてい、やけに近いなぁと思うのです。
そのときも、ちょうどそうだった。彼がちらとこちらを向いて何か言い、言い掛けた形のまま漫画の効果音の描写みたいに彼の姿を吹き出しごと轟音が覆い隠した。
「え?」
「薔薇公園と海、どっちに行きたい?」
「あぁ…うーーん…、んー…、海かな」
「と、思ってさっきのカーブ曲がっといたよ」
海には拍子抜けするほどすぐに着いた。
例え何か話すことがあってもなくてもそんなのお構いなしにしてしまえるほどのあっけない距離で、そんな距離しかない道のりだった。
一台しか車の止まっていない有料駐車場でUターンして、浜辺には降りなかった。時間のない距離を消費するためだけにここに来た気がして、改めて会ったことを後悔する。
終わらせられないのに今でも離れることを進めていくわたしたち。離れていくのに終わらない関係が、きっと明日も影を落とすだろう。
帰り道、前の車が変な位置で停車した。前にいってほしいなと彼がつぶやく。私はあわててシートを前にずらした。彼は笑って、君じゃないよ、と…
終始、ちっともいい雰囲気じゃなかったと思う。少なくとも再会を懐かしんだりする空気は一切なかった。常に彼が一方的に質問して、私がそれに適当に答えるのが繰り返されるだけで。お互いに慣れる時間を作ろうとするそのわざとらしい準備運動が私には鬱陶しかったし、なんだか余計にさびしかった。
「もう戻れない?」
私の家のすぐ近くにある学習センターの駐車場に車を止めて、彼は言った。車を返さなければいけない時間は過ぎていた。
「戻れないよ。何度も言ってるじゃない」
「そういえば、H君が殺してでも手に入れたいって言ってたよ」
「あはは、正しいのかもしんない」
「正しい?それって俺が今ここで殺して奪ってもいいってこと?」
「死んだ私の方がいいなら。ね。」
「そんな表情したやつ殺せるかよ」
「車返す時間過ぎてるよ」
後ろから彼の視線を感じながら車を後にした。ひとりでに小走りになる自分の足を見て涙が滲む。会いたくなかった。
家の門に手をかけたとき、背後を物凄いスピードで車が通り過ぎていった。
見上げると、すぐ真上に、爆音を伴ったヘリが、空を飲み込んでいくのが見えた。
無題
もうやだ。
やーなことしか書けないし描けないし言えないし
やなやつ!
弱音はきたい。
自分でもびっくりするががーってすごく暴力的になるんだけど次の瞬間には泣き崩れてしまいそうになる
誰でもいいんです傷つけるのも傷つけられるのも
誰でもいいんですあなたのように
ばらばらに切り刻まれる夢を見た
その後ばらばらなのに中だしされた
がばっと布団を払いのけ汗だくで目を覚ましたら、また夜で、自分でもどうしてそんなものが視認できたのかわからないけれど天井から黒か白か透明かの水滴が落ちてくるのが見えて、興奮した体のまま痩せた野良犬の速さで仰け反った。水滴は、明らかに私の目を狙って落ちてくる動きだった。
ベッドにぽたりとシミがつく。
何ヶ月かぶりの生理だった。
もうやだよーー
大声出して泣きたい
うわぁ・・・・・
無意識だったらかなしい
今のわたしはさいあくだ
好きだと寄ってくるあなたが私を一番憎む
憎くて憎くて忘れられないんでしょ。
君を傷つけてるのは私だけど、傷つこうとしてるのは君だよ
H君今まで沢山のヒト(女の子)を利用し傷つけ捨ててきた罪を私に擦り付けたくて、無理して無理して自分を卑下するのね
解りやすい言葉で入り込んで、怒るのと悲しむのと謝るのとを繰り返し、傷つけられるのをひたすら待つんだね
息のかかるほどの近さだとあなたが思う距離で。
一緒にいる空間にあるもの(灰皿や言動や椅子やコーヒーや雰囲気や)全てがエゴに感じられてしまった時その人は生理的に受け付けられないんだと思う
「何かに苦しんでませんか?
泣いていませんか?
笑っていますか?
朝起きれていますか?
風邪引いてませんか?
ご飯ちゃんと食べてますか?
君が幸せを多く感じられることを切に願います。
月に一度でいいので・・・メールください。」
あなたのメールは暴力だ。
そうそう、何か勘違いして彼(私の元彼)と縁を切ったようですが私を「追い詰めている」のはあなたです。あなたもです。
あなたが彼だけが傷つけているのだと主張したから噛み付いただけです。
それでいて少しでも彼に笑いかけてくれないかと私に頼むあなたの偽善者ぶりと点数稼ぎに思える浅はかさに吐き気がしたから。
だから彼に対してあてつけのようなことをするのは畑違いだと思います。図星だったんでしょ?私は本当のこと言っただけだよ。何が傷つくよ。傷つけているくせに。別に嫌いだからこうゆうこと言ってるわけじゃない。
だから、本当のことを言っただけ。それであなたが傷つくのはおかしい。こっそり自分のホントに気づいてるでしょ。
もし万が一どういうわけかあなたがこれを見ていたとしたら。
虫の歌
眠れないから夢も見ない
昨日今日より明日に疲れた
生きてるかぎりは手に入らない
殺して奪って捨ててください
もうこんな関係
もう距離は無い
焦点の合わない片目のよう
溶けずに残ったココアのよう
ほくろを数える精神を以てあなたの愛を測ろうか
人形を撫でる手つきで罵倒を受け入れようか
ストレートな感情なんてきらい
ひとつきりじゃないくせに
カフェラテ飲んで暖めて
望まぬ夜更かし許す晩
真夏に湯たんぽ抱きしめて
氷をあなたに投げ返す
きらいきらい、きらい
幸せになろうとしない君がきらい
戻って来いという君がきらい
俺が守るという君がきらい
こんな苦しい夜でさえ
虫の音が私を許してくれない
そこにある穴

狭い教室、ぎゅうぎゅうに詰められた。どこを見ても頭がある。
右の、左の、前の、後ろの、熱のかたまりたちが、見つめる先、視線が集中する壁の一点を、
吐き出すCO2をレンズとして、眼球から発する矢印を陽光として、ジジジと焦がしていく。
熱で溶けてく壁の一点は、よく見るとまぁるかった。
ありがと、私はそこから逃げられる。あの穴から出て行ける。きっときっと。
私がそう言うと、不意にガララとあいた壁の穴を見て、あなたは笑った。
その音を機に、壁を焦がしていた目が、一斉に私を見る。
そう、
穴の向こうから、こちらの何倍もの数の目が私をのぞいていた。
他の誰かを見てるのだろうと周りを見渡したら、穴に向けられていた右の、左の、前の、後ろの視線たちも、みな私を見て、穴を開けよと焦がしていくのはちっさな体。
逃げた先にはさらに逃げるべき対象があった。
私を逃がしたあなたが、私を追い詰める。
嫌なことばっかり!つらいことばっかり!
抜け穴へ駆け込み、その先を見て、本当は、私は、ちっとも逃げれていないことに気づく。
壁を焦がす視線。
私を逃がそうとしてくれるあなたは、私が逃げたいあなたでした。
20
うすいだいだいの空、
白くない雲をよけて、その真ん中にちゅうくらいの赤い判を押した神様。
こうやって、私はもうすぐ二十歳になる。
17の私にはしっぽすら見えなかった世界。
遠すぎて、というか無いと思っていたそれは、その頃他の誰かの未来でしかなかった。
去年の今頃のほうが焦ってた。十代最後の夏をエンジョイしなきゃっ!!って。
なんで十代にプレミア付けてんだか、でも、19と20って果てしなく離れてる気がする。
たった一日でも、オーバーしちゃえば成人なのです。
でも、なんか、今は、受け入れてるわけじゃないんだけど、本当にくるんだっていう感覚のほうが強い。
本当に、私にも二十歳とゆう年齢がくるんだ。
蝉の鳴き声が一層力強くなる頃、十代が終わる。
幼すぎて、楽しいことだけを目印に走りころげた。
イヤなことは大抵知らないでいられた。
若さ故の可能性を持て余して、生意気にもそのもったいなさを武器に大人に立ち向かえた。
小走りに雲を追いかけて、届かなくってもころころ笑えた十代、さよなら。
今年二十歳になる人に、ROSSOの「1000のタンバリン」を贈りたいです。
月は抜け穴みたいだとビルの屋上から小石を投げつけるあなたへ、
「1000のタンバリンを打ち鳴らしたような星空」を贈れない代わりに。
黒の絵の具に、虫の音の緑を足した夜、
背中に見える大きくない星をよけて、その端っこに今宵のみの月を貼る私。
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