雨降りのまいにち
本当の雨はいつも降っていて、雲の切れ目は川だった。
いつだって雨ふり
逆立ちの世界がそうさせたこのまいにちに、あなたたちだって雨を降らせている。
私の真上を空と言うのなら、その空に宙ぶらりんなことが始まりだと思ってた。
何万人の宙ぶらりんの空からこぼれ落ちた言葉が雫になるの?
間断なく千切れる涙が空を濡らすの?
逆さであることを忘れて、
とどめも刺さずに空気の吐息で降る雨を誘う誰かで居続けるあなた。
いつだってどこだって私だって。
弓なりの青草が露を弾くこともできずに、
優しさみたいに湿気に包まれたままこのまま、
逆さであろうと変わらない、舞った触れた雨は空か自分かに吸い込まれていく。
どっちにしろ、って、ね…
眠りに落ちるときになってやっと
光の溶け出す海底に沈む太陽は
浴槽の滴りを引きずってきたのか足下に小さな水溜まりを作って、静かに足の降ろされるのを待っていた。
目の淵にうずくまる10
思い出と経験の間の大切な心残りだなんて言うつもりはない。
ただこの一文の前半も後半も、うそ偽りないのだけれど。
傷が繋がるように言葉も同じように表現してしまうのが可笑しい。
ベッドの中で眠れない瞼を絶えず、震えと震えの間の空虚も絶やさず震わせることが、私にとって書くことなのかな。
夜が影を長くして
まだ、まだ、もしもの街から出られない。
照らす街頭は柄だけ無いし、車道の中央線は気にならぬくらいアスファルトに馴染んでいる。
10こ数えるうちに隠れてね
宙に浮き出た文字など見てやるもんかと見据えたまま声になった数、
あなたとの間にある音階を数えるようにイヤホンになった耳。
見つかるわけがない。
夏が終わった。
カーテンのつくるしわみたいなスキマがもしあなたをさえぎる断絶だとしたら私は朝が来なくていい。
自由でもないくせに、飛べなどしないくせに手を伸ばし、
窓をドアに出来る鳥なのだと言いたげな君を
涙でなのか元からなのか、歪んだ視界の中心に置きながら、さっとカーテンを引いた。
鍵穴に自分の影を
みんな、明るい方に歩いていくけど
私の元いたところは明るかったのかな。
どこから来たの?
暗いところ?
影の差したのぞき穴 どこもかしこもドアだから
そろりと目を近づけて また離して
そんな足取りを蹴り飛ばす光る鳥が私を啄む。
白い空って見たことある?
内側だからベルは鳴らせないよ。
こんこんこん
最初は"灰色"なんてなかった。みんな黒が嫌だったから、灰色なのに白と言い張ったんだ。
灰色か、もしくは黒め、こっちは明るいぞ。
帰りたい。
違う色があったはずなの。
まだだめだと
好きだなんて死人に使って。
誰と来たかなんて言わないで。
帰りたくない。
モノクロには名前の無い黒がある。
違わないよ、どこも真っ暗かどこも真っ白か。
強弱のいらぬ譜面
離れて糸を引くその動いた方の時間を聴きながら
あなたを思ってむせぶ空気が声になり音程高くリズムを分かつ。
雫なんかじゃない。
繋がりなどしない、常に酷似して
破り捨てようがどこからでも連なる。
音符の叫びだ。
瞼の端みたいな心臓が似たように震えて吐き出す血色の声だ。
あなたがいい。
殴り書きされたサヨナラみたいな気体しか呼吸を許してくれないのに
新しくもない罪がそれすらさせない、同じように憎い。
どうして傷は、つながってしまうの。




