雨が冷たい
ミスタードーナツで課題を地味にこなしていて、はたと気づいて顔を上げると窓の外は土砂降りだった。夏のぬるい雨。好きな歌を流していたイヤホンを外すと、地面で弾ける雨音に混じって雷の音まで聞こえた。傘を持っていない。
天気予報を見なかった今朝の自分にため息をつきながら、また課題に戻って、それから10分も経たない内にミスドを飛び出した。ベランダで激しく揺れているであろう洗濯物を思い出したからだ。
時折脈打つように光り唸る青黒い空を背中に、鼻先から足の爪まで濡れそぼりながら歩いた。今更走ってももう一緒であるし、何より雨粒が勢いよく瞳に飛び込んで痛い。夏の雨が私に触れる。
次から次へとひっきりなしに目から滴る雨が、涙のようで、私は洗濯物のことが心配で泣いているようだった。不安もなにもない。その言葉すら出す前に流そうと、雨が私を冷やす。
もう少し待っていたら止んだのではないのだろうか、なんて、考えつかないほど激しく降り続いて、するするとした雨粒は私の頬を撫で続けた。冷たい。私は夏の雨すら冷たく感じるほど、体温があったかな、としばらく考えながら曲がり角を目指した。
家に帰り着くとすぐに、水分を含んで重くなった服を脱いでお風呂に入った。湯船に浸かりながらずっと歌う曲があった。お湯はぬるい。
おでこまで潜って、片手を壁に這わせ、足を曲げると静かに起きあがった。洗濯物。
恐ろしくびしょびしょになった洗濯物を取り込んでから、これまた濡れ鼠のようなバッグの中身を取り出していると、ミスドに筆箱を忘れていたことに気づきまた外へ出た。幸い雨は止んでいた。
土砂降りの空の後は、雨にも満たない粒だけの雨がパチ、パチ、と残りたがるように降っていた。雨雲で暗くなった歩道を歩きながら、電灯の影を踏み踏み、洗い立ての髪が口の端を泳いでいるのをそのままに、ああと微熱の溜め息をついた。
私はだいぶ火照っている。
![]() | shabon songs (2007/02/14) 安藤裕子 商品詳細を見る |
季節に降る雨
ひとつの指を滑らせた紙が平坦を保つ表面のざらつき
それから捲られて、さらに前に戻る動きを、夏にとまる蝉が聴いている
木陰の輪唱、目下にまだら
陽を浴びて移動する影の背中、今日は晴れだった。
強い雨を流した風の日があった
水滴に去られたあとの木々が見ている路を歩いた
雨を恋のように激しく受けた葉々が一面に落ち
その隙間のほんのいくつかを、鳴かぬ蝉が満たしていた
歩く場所を目で探して、遅く放す足先
とまりながら、下を向き、指の感触を確かめながら、夏の凹凸を踏んだ
内で蝉は鳴く、風が表面を撫でる、長い髪が舞い上がり、顔を上げる
既存の季節を、わたし忘れてしまいそう。
喩えのように進むのならどこへ向かうのか
生活を縦に跳ぶ一つの衝動、形づく前の言葉の上、
私の天井に背伸び、もう一度灯りを消すの、浮かぶ星、
仰げばただただ光を見て、そうでない時は暗闇に慣れた。
面のある水溜りをさえぎる雲のある曇天で、
すべての場所をふたつに分ける雨と雨の跡
膨らみを帯びた内部は見えない、反響する奥の瞳
表出する感触の浸透、繰り返しの・・・
春の遠い私はくぐるharufar
壊れを挟んだ私の体の折り目を、本のように綴る言葉たち。
消え移ろう宵を見ている言葉たち。
夜は長いと重ね合わせる時間の滑り。
あなたの午前二時を覚える言葉を、あまりに自分としてしか書けない。
それすら指でしかできなくて、掌の小ささが、太陽を隈取る気がした。
それから捲られて、さらに前に戻る動きを、夏にとまる蝉が聴いている
木陰の輪唱、目下にまだら
陽を浴びて移動する影の背中、今日は晴れだった。
強い雨を流した風の日があった
水滴に去られたあとの木々が見ている路を歩いた
雨を恋のように激しく受けた葉々が一面に落ち
その隙間のほんのいくつかを、鳴かぬ蝉が満たしていた
歩く場所を目で探して、遅く放す足先
とまりながら、下を向き、指の感触を確かめながら、夏の凹凸を踏んだ
内で蝉は鳴く、風が表面を撫でる、長い髪が舞い上がり、顔を上げる
既存の季節を、わたし忘れてしまいそう。
喩えのように進むのならどこへ向かうのか
生活を縦に跳ぶ一つの衝動、形づく前の言葉の上、
私の天井に背伸び、もう一度灯りを消すの、浮かぶ星、
仰げばただただ光を見て、そうでない時は暗闇に慣れた。
面のある水溜りをさえぎる雲のある曇天で、
すべての場所をふたつに分ける雨と雨の跡
膨らみを帯びた内部は見えない、反響する奥の瞳
表出する感触の浸透、繰り返しの・・・
春の遠い私はくぐるharufar
壊れを挟んだ私の体の折り目を、本のように綴る言葉たち。
消え移ろう宵を見ている言葉たち。
夜は長いと重ね合わせる時間の滑り。
あなたの午前二時を覚える言葉を、あまりに自分としてしか書けない。
それすら指でしかできなくて、掌の小ささが、太陽を隈取る気がした。






